2026-03-28Tokyo
PRINTED THINGS

活版印刷の豆知識・技術

活版印刷、淡色インクと紙の白さの関係

活版印刷でDICのライトグレーを指定したのに、刷り上がりを見たら「思ってたより薄い」あるいは「なんか濃い」と感じた経験、デザイナーなら一度はあるんじゃないかと思います。オフセットの感覚でDIC番号を選んでいると、活版ではちょいちょいこういうことが起きます。

活版印刷は、金属や樹脂の版を紙に押しつけて印刷します。インクが紙の繊維に沈み込みながら定着するので、紙の素地の色がそのまま「下地」として色の見え方に関わってきます。これがオフセットとは決定的に違う部分で、紙の白さがインク濃度の見え方を直接コントロールしているんです。

白い紙——たとえばアラベール ホワイトにライトグレーを刷ると、紙面の白さとインクのコントラストが高くなるぶん、インク自体は薄くても「薄い灰色」としてクリアに見えます。でもその「薄さ」が強調されすぎて、意図していたよりもずっと頼りない印象になることがあります。

一方、アラベール スノーホワイトや竹はだGA、カラープランFSのような少しトーンを持った紙を選ぶと、紙とインクのコントラストが和らいで、同じDIC指定でも色が「落ち着いて、少し深く」見えます。体感としておおむね白紙比で20%前後濃く見える感覚があって、「薄すぎるかな」と思っていたインクがちょうどよく馴染んだりします。

このロジックを知らずに発注すると、ライトグレーを指定したつもりが「ほぼ見えない」仕上がりになったり、逆に淡色紙に指定したら「こんなに濃くなるとは」と驚くことになります。DICの色見本はあくまで参考で、実際に刷られる紙との組み合わせで見え方がかなり変わる——これが活版の面白いところでもあり、難しいところでもあります。

実務的には、淡いトーンを狙うなら白い紙×少し濃いめのDIC番号、または淡色紙×ライトグレーという2通りのアプローチがあります。どちらが正解というわけではなく、仕上がりのニュアンスが微妙に違うので、サンプル刷りで確認するのが一番確実です。「同じ色なのに紙で変わる」は活版特有の現象なので、入稿前に一度立ち止まって考える価値があります。

インク色の指定に迷ったときは、使う紙の素地の色をベースに「そこからどれくらい浮かせたいか」という視点で考えると、直感と仕上がりのズレが少なくなります。色番号だけで判断せず、紙とのセットで設計する——活版ならではの思考回路として、ぜひ身につけておいてほしい視点です。

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